これぞ新しい在日ファンク!

よりファンキーに! よりメロウに!
踊りながらも胸の奥がグッとくる...!
最高のアルバム『再会』が完成です!
驚くほどの成長を聞かせてくれる在日ファンクの決定盤!

5th ALBUM『再会』

在日ファンク 5th 5th Album『再会』ジャケット

品番:DDCK-1058 
全 12 曲収録 ¥2,800+税

高橋マコイチ(思い出野郎Aチーム): Vocal (M-6)
サイトウ”JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD): Produce & Fender Rhodes (M-8)
-
All tracks Arranged & Produced by 在日ファンク
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi @ Volta Studio Recording, MARNI STUDIO, Aobadai studio, RDS Toritsudai
Mastered by 前田康二 at Bernie Grundman Mastering
-
Art Direction & Designed by 入稿[吉澤成友+大原大次郎]

  • 01. サチタイム
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦
  • 02. 足元
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦
  • 03.葛藤&ファンク
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、橋本剛秀
  • 04. 亜種
    作詞/作曲:仰木亮彦
  • 05. 健やかなる時も病める時も
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦
  • 06. 飽和 feat . 高橋マコイチ ( 思い出野郎 Aチーム )
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦
  • 07. 或いは
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦
  • 08.なみ
    作詞:浜野謙太、仰木亮彦、サイトウ”JxJx”ジュン
    作曲:仰木亮彦、村上基、サイトウ”JxJx”ジュン
  • 09. ふるさと
    作詞:浜野謙太 作曲:仰木亮彦
  • 10. ハートレス
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、橋本剛秀
  • 11. 再会
    作詞:浜野謙太、仰木亮彦 作曲:浜野謙太
  • 12. 泊まっていきなよ
    作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太、仰木亮彦

高橋マコイチ(思い出野郎Aチーム): Vocal (M-6)
サイトウ”JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD): Produce & Fender Rhodes (M-8)
-
All tracks Arranged & Produced by 在日ファンク
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi @ Volta Studio Recording, MARNI STUDIO, Aobadai studio, RDS Toritsudai
Mastered by 前田康二 at Bernie Grundman Mastering
-
Art Direction & Designed by 入稿[吉澤成友+大原大次郎]

「足元」ドラマ『面白南極料理人』(テレビ大阪)オープニングテーマ
「或いは」ドラマ『ルームロンダリング』(MBS/TBS)主題歌

「足元」ドラマ『面白南極料理人』(テレビ大阪)オープニングテーマ
「或いは」ドラマ『ルームロンダリング』(MBS/TBS)主題歌

MUSIC VIDEO


インストア情報

在日ファンク『再会』 発売記念
ミニライブ&握手会

2018.11.25 Sun
タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース

詳しくはこちら zainichifunk.com/live/post/4887/

店舗特典

タワーレコードにてご購入の方にオリジナル・バッジ


リリース記念ワンマンツアー
「しようよ、再会」

2018

12/2(日)名古屋 JAMMIN’

OPEN 17:00 / START 17:30

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 131-327)
・ローソンチケット (L: 43967)
・e+

INFO

JAILHOUSE: 052-936-6041

12/8日 (土)札幌 BESSIE HALL

OPEN 17:30 / START 18:00

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 131-297)
・ローソンチケット (L: 11652)
・e+

INFO

Mount Alive: 011-623-5555

2019

1/10(木)大阪 umeda TRAD

OPEN 18:15 / START 19:00

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 131-315)
・ローソンチケット (L: 51619)
・e+

INFO

GREENS: 06-6882-1224

1/12(土)福岡 BEAT STATION

OPEN 17:30 / START 18:00

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 131-223)
・ローソンチケット (L: 84394)
・e+

INFO

BEA: 092-712-4221

1/13(日)広島 セカンド・クラッチ

OPEN 17:00 / START 17:30

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 131-281)
・ローソンチケット (L: 61618)
・e+

INFO

夢番地 広島: 082-249-3571

1/20(日)鶯谷 東京キネマ倶楽部

OPEN 16:45 / START 17:30

TICKET

前売 4,000円
(税込・ドリンク代別・オールスタンディング)

・チケットぴあ (P: 130-990)
・ローソンチケット (L: 72136)
・e+

INFO

VINTAGE ROCK std.: 03-3770-6900

詳しくはこちら zainichifunk.com/live/


OFFICIAL INTERVIEW

在日ファンク

前作『レインボー』リリース以降、サックス担当の後関好宏の脱退、橋本剛秀の加入というメンバーチェンジ、そしてレーベル移籍という激動の日々を送ってきた在日ファンク。すでにデビューから10年を数えようとする波乱万丈のキャリアの中でファンクを基軸に様々な音楽的挑戦を続けてきた彼らが、ボーカル/リーダーの浜野謙太の故郷ともいえるカクバリズムと再会しリリースする最新アルバムは、そのタイトルにズバリ『再会』と冠された。

今回インタビューを務める筆者も実は、かつて『爆弾こわい』、EP『連絡』など彼ら作品へA&Rディレクターとして携わってきた者でもある。久々に再会した彼らは驚くほど何も変わっていないように見えて、そんな姿にふと懐かしさと安心を覚えたのだが、激動の日々のことや新作の制作について、そして各曲に込められた思いを聞いているうちに、彼らの内面、そしてバンドそのものが、大きく、そして豊かな変化を迎えているのだということを知らされることとなった。

『再会』はとても豊かな作品だ。しかも赤裸々でもある。そしてなにより、今までで最もジョイフルな作品だと断言できる。なぜこれほどまでに豊かで、赤裸々で、ジョイフルなのかは、以下のロングインタビューから鮮明に見えてくるだろう。

(インタビュアー:柴崎 祐二)

【激動の日々を振り返って】

―お久しぶりです。
アルバム聴かせていただいて一番初めに思ったんですが、みなさん、めちゃくちゃ演奏上手くなってません…?

一同:はははは。

久保田:さすが!かつての演奏を知っている人はやっぱり気づいちゃうよね~。

ーだからと言って、例えばタワー・オブ・パワーのように、シャープ且つタイトになりすぎていない感じもあって、なんだろう、大人の余裕のような…。
みなさんアダルトになられたんだなあ、と。

一同:(笑)

―この一年は、後関さんが脱退して橋本さんが加入するというメンバーチェンジや、レーベルの移籍もあって激動の時間だったかと思うのですが、改めて振り返ってみて、どんな期間でしたか?

浜野:以前まではただひたすらうまく演奏することと、ただ「こういうバンドになるんだ!」って決め付けて活動していたようなところがあったけど、この期間を経てそこから脱したのかなという感覚がありますね。
もっと音楽的に出来たこともいっぱいあったはずなのに、とりあえず目的なく「とにかく技術を付けよう!」ってなってしまっていたけど、今は肩の力が抜けた感じかな。

―「演奏するための演奏」になってしまっていた、と。

浜野:そうそう。演奏者が悪いって意味じゃなくて、リーダーである僕がみんなをそういう状況にしてしまっていたのかなあ、と。でも、それは違うよなっていうのは、前作『レインボー』から考えだしたことかもしれないです。最近ではそれが明確化してきて、身につく技術が一つ一つ必要不可欠なものとして積み上げられている気がします。

―他の方にとってはどんな期間でしたか?

久保田:ホーン隊に関して言えば、「在日ファンクホーンズ」の名義でテレビや他アーティストのレコーディングとか色々なことをやらせてもらうことが増えた期間でもあったんですよね。
そういう経験を在日ファンク自体へ還元することで、却って自然な形で在日ファンクの中に居るって感じになりましたね。
それと、それまでに考えていたような、「どういう風に世の中に対してバンドに見せなきゃいけないのか」とか「ある程度有名にならなきゃ!」みたいな、音楽そのもの以外の部分がかなり削ぎ落とされたなと思います。みんな自由に自分のスタンスで在日ファンクの音楽に向き合うようになった感じ。前は「アイドルと演奏できて嬉しいなあ」とか、「あのテレビ番組に出れる!わーい」みたいなのもあったけど…最近はみんなそいうことで興奮しなくなっているかも(笑)

浜野:前はスケジュール的に無理をしてバンド内がピリピリしたこともあったしね。

久保田:もちろん、いろんな仕事があるっていうのは嬉しいけど、その分自分たちの曲が作れなかったりしたしね。今は無理のないところで音楽に向き合えるようになったっていうのが大きいですね。今回も力の抜けたレコーディングができたし。

啓太:メンバーチェンジを経て、ちょっとライブをやらない期間があったんです。その後キッズくん(橋本)が入って、そこから改めてライブをやるようになったとき、ライブ一つ一つが改めて楽しくなった気がします。
もちろんそれまでも楽しかったんだけど、違う感覚の楽しさ。それまではかなりの本数のライブをこなしていたけど、今は数を絞っているっていうのもあるかも。

―一回一回のライブの「味」がするようになってきた、みたいな?

浜野:味(笑)。

啓太:そう。しかもライブごとで、いろんな味がするようになってきた。昔はわりと似た味だったのかもな。
フェスとかワンマンとか、それぞれのシュチュエーションによって違った楽しさを味わえるようになったのがここ1~2年という気がします。

仰木:ライブも含めて、自分たちがそれを本当にやりたいのかどうかも分からずとりあえず「やるべきなんだ!」っていう感じでやってきたものを、立ち止まってそれが本当にやりたいことなのかどうか考える期間でしたね。
作品を作るにあたっても、「いついつまでに作ってくださいね」っていう環境じゃなくて、じっくりどんなものを作りたいのか精査することが出来た。今回のアルバムでも、たくさんボツ曲があるんです。そういう風に曲をじっくり選ぶ時間を設けられたというのは大きいですね。

―それまでは、「作った曲は全部入れなきゃ!」みたいな感じだったんでしょうか?

浜野:もちろん曲の取捨選択はあったんだけど、なにぶん期限ってものがあったから。
周りのスタッフに聴いてもらって、いいって言ってくれているけど、「それ本当かあ?」とか、そういうことばっかり考えちゃって(笑)。今回は自分として各曲を十分に楽しんで制作したから、これ以上やりようがないっていう状態まで持っていけたなって思ってます。

―永田さんは?

永田:そうですね、僕は最近、在日ファンクと距離を取る感じに…

一同:(笑)

永田:(笑) 言い方が難しいんですけど…以前はバンドというものに入り込みすぎてたなって思っていて。7人それぞれが、それぞれのことを考えるっていうより、「在日ファンク」という集団のために7人がいるってかんじだったけど、最近はそれぞれ一人の人間として向き合っていい音を出せるようになってきた感じがしますね。

―「バンドとはこうあるべきだ」っていう考え方を一旦脇において?

永田:そうすね。「俺はいいけど矢沢がどう言うかな」みたいな考え方を在日ファンクとしてしていた時期もあったけど(笑)、そういうのが今はなくなったっていうか、そもそも何が正しいのか分からなくなってきてしまって(笑)。
まあ、時にはそいういうのがあったほうがいいのかなとも思うけど、やっぱりみんなひとりひとりの人間なので…。そういうことに気づけた期間でしたね。

基:時間の流れがゆっくりになった感じがすごくします。実際に以前より活動ペースも落ちていると思うし、その分色々なことに気持ち的にもあまり縛られなくなった。
後関さんが抜けたときにやっぱり不安もあったけど、キッズくんが入ったことで、全然違う感じですごく面白いなあって気持ちになれたのも大きい(笑)

―新メンバーとして加入した橋本さんは、加入してからこちら、どんな日々でしたか?

橋本:純粋にすごく楽しいです。入っていきなりガンガンライブやったり昔の曲を覚えたりとか、そういう感じじゃなくて、基本リハでずっとみんなと一緒に新曲をやるっていう。
まあ、浜野くんから急に、「次のライブであの曲やりたいんだけど」って言われて「えっ俺その曲知らないよ」みたいなのも結構あるんですけど(笑)、以前のメンバーと同じフレーズをただなぞるのではなくて、みんなでやいのやいの言って新しく考えながらできる。

―新しいバンドに早く慣れなきゃ、という感じじゃなくて、自然に入っていけた?

橋本:そうですね。それはとてもありがたかったし、楽しかったですね。

【新作『再会』の詩作について】

―僕が毎作在日ファンクのアルバムで楽しみなのは、浜野さんはじめメンバーが、今という時代をどう見てどう感じているかが作品から見えてくるところなんです。
今回、そのあたりはどんな意識で制作していったんでしょうか?

浜野:これまで歌詞で結構強気なことを言ったりもしていたんですけど…今回はまたちょっと違って。

―たしかに前々作『笑うな』などでは明確に社会的な問題にアプローチしようという意思が感じられました。

浜野:そう(笑)

―なんで笑っているんですか(笑)。

一同:ははは。

―その次の『レインボー』ではポジティブなメッセージが込められていた。

浜野:そう。それらを経て、今回どういうものを書いたらいいのかなって改めて考えたんです。
若い子たちの書く攻撃的な歌詞とかってすごく刺激的なんだけど、僕には今絶対こんなの書けないなって思うんですよ。
一方で抽象的な歌詞を書くベテランの方の作品も好きで聴くんですが、「俺はこれじゃないな」って思って。抽象的なことを言い続けるより、むしろ年取ることによって単純なことや分かりやすいことにこそ重みが出てくるんじゃないかなと思ったんです。
ちゃんと研ぎ澄まされたわかりやすいことを、ちゃんと分かるように、どんどん単純な言葉で表現していくべきだと思って。
そういうストレートなやり方って、今まで恥ずかしいと思っていたからあまりやってこなかったんですけど、意外と曲に乗るなあという気付きもあって。そのワードだけ抜き出すと恥ずかしいようなことでも音楽にすると成立する。逆に、捻ったワードを考えて、これはトンガッてるぜって思っても、曲に乗せると全然ダメだったり。そういう学びもありましたね。

【タイトル『再会』について】

―今回タイトルの『再会』というのも非常にシンプルで強いワードだと感じます。やはり、いろいろ紆余曲折を経て馴染みのあるカクバリズムに移籍したというようなこともテーマとして大きなことだったんでしょうか?

浜野:それは結果的にそうなったという感じなんです。そもそも、在日ファンクがカクバリズムをずっと避けてきたっていうのは…

―避けてたんですか(笑)。

浜野:(笑)なんか僕らのサウンドにカクバリズムは合わないんじゃないかなっと思ってて。

―なぜ?

浜野:なんかその…僕らにはカクバリズム的なオシャレさがないから…

一同:(笑)

永田:あんま音楽を幅広く聴いたりしないしね。ceroの人たちとかにくらべると(笑)。

浜野:(笑)。でも自然とカクバリズムとバンドがお互い近づいてきて、コロンビアを辞めたっていうタイミングもあったりで結果的に移籍して。
今作を作りはじめるとき、「カクバリズムっぽいアルバムを出さなきゃな」って僕がポロッと言ったら、マサヤ(小林マネージャー)が「いや、そういうのは考えなくていいですから」って半ギレで言われて(笑)

―ついそういうことを考えてしまうマインドになってしまってたけど、カクバリズムはやっぱり自由だった、と(笑)

浜野:時間と余裕が与えられた感じはありますね。でも、カクバリズムに入ったら甘やかされちゃうんじゃないか、自由を与えられることで逆にどんどんこわくなってしまったりとか (笑)

久保田:それはある(笑)。

浜野:自由にさせてもらえる環境になったことで、「俺達、ちゃんとホントのものを見つけなきゃ!」みたいに、かえって奮い立ちましたね。

―以前は肩肘を張って考えていた「こうあるべき!」みたいなものが、解毒された感じなんですかね。僕としては浜野さんの懸念に反して、今作は結果的にとてもカクバリズムっぽいアルバムになっている気もしましたけども(笑)。

浜野:そうそう。それが結果的に「再会」って言葉に象徴されているのかなって思います。
本当になにも考えずに楽しんで作ろうというところから始まりましたね。最初に打ち合わせしたときカクバリさんにも「音楽を楽しめるようになってください」って言われて(笑)。

―セラピーみたいな(笑)。

浜野:みんなで笑いつつも、内心グサッてきたっていう(笑)。

―当初から明確な「再会」というビジョンがあったというより、環境なり時間が「再会」っていうキーワードに導いてくれた感じなんですね。

浜野:そう!(拍手) ジャケットも、大原大次郎さんとYOUR SONG IS GOODの吉澤成友さんという、昔からSAKEROCKに関わってくれていた人たちが手がけてくれて。ずっと近いところにいたし仲良くしてくれていたんで、いつでも頼めたんですけど、やっぱ彼らはオシャレだから合わないだろうなとか勝手に思ってて (笑)。
でも、今回は頼んでみようってことになって、また一緒にできるのを嬉しいと言ってくれたし、何よりフィット感がすごかった。再会するべくして再会できたような感じなんですよね。

仰木:思えば一番最初に在日ファンクでライブした大阪のシャングリラに、すでにカクバリさんが舞台上にいたんだよね(笑)。10年越しの再会(笑)。

【曲作りについて】

―今作のクレジットをみると、浜野さんが仰木さんや橋本さんと共作している曲が多いですね。

浜野:そうですね。「ああもうダメ!曲を完成させられない!」って俺がなっちゃって(笑)。そういうときに手を差し伸べて大々的にやりとりしてくれたのがその二人。

橋本:実際はクレジットされている人に限らず、みんなで意見を言い合って作っているよね。

浜野:ここだけの話…印税は全員に入るようにして…。

―赤裸々な(笑)
では、アレンジにみんなが意見を出す度合いというのは以前より上がっている?

浜野:そう。でも、出すべきタイミングはみんな気を遣ってくれてますね(笑)。

永田:まあ固まるまでに時間かかるのはわかっているから、ある程度できたらあえて寝かせて、ハマケンに最後のひらめきが降りてくるのを待つっていう。
細かいところでもちょっとしたことがハマればうまくいくし、逆に「ほとんど完成じゃん!」と思っていても、ちょっとしたところで納得が行かないとボツ曲になったり。

―でもやっぱり、ファンクってそういうところが大事なんだろうなって思います。フレーズをリフレインして積み重ねていく音楽だからこそ、ちょっとの掛け違いで全く変わってきてしまう。

【レコーディング~ミックスについて】

―今までいろいろなエンジニアさんと制作してきたかと思うのですが、ツボイさんはどんな方でしたか?

橋本:「デジタルで音楽作りながら、アナログで音楽聴いてる人の感じというか。ドライさと音圧感のセンスが流石だと思いました。ベースとドラムの音が兎に角カッコいい」

浜野:録りの音の時点で既にめちゃくちゃカッコいい音だったよね。

仰木:事前に『ツボイさんはミックスで逆回転とかさせてくるから』って聞いてて。どんなミックスが上がってくるのかみんなビビってたけどね(笑)結果、そのドライさだったり重心の取り方が今の在日ファンクのモードにすごくハマってるなって思った。

―肉感的なんだけど、一方ですごくクールでもある。ヒートアップしているように聞こえるけど、冷静にグルーヴがコントロールされているように感じる音像というか…。

浜野:ずっと在日ファンクが出したいなと思っていた隙間とか余白みたいなものをツボイさんが作り上げてくれたなって思っています。
今までは演奏技術的にも漠然とした不安があったから、音を詰め込んできた。これまではそうしたかったし、そのびっしりなパワーも好きなんだけど、ツボイさんはそうじゃなくて、奥行きとか立体感を大切にしてくれたのかなと思います。
そうすると、今まで聞こえてこなかった魅力が色々と聞こえてきた気がします。「ここからここまで全部使わないけどここは鋭く使う」みたいな。そういう、音と余白の捉え方が素晴らしい。

【各楽曲について】

1.サチタイム

―やっぱり歌詞における浜野さんの言葉のチョイス力をひしひしと感じます。
生意気な言い方ですが、すごく…ご成長されている感じが…。

一同:わははは。

浜野:「ご成長」いただきました。ありがとうございます(笑)
最近はみんななんでもかんでも検索するっていうか、インタビューとか受けるとライターさんが必ずネットでいろいろ調べてきてくれたりして。俺らの世代だと、「え、調べたの?」って感じなんだけど、むしろ調べることが人間として普通になっている。

―「ネットでわかることを知らないのは失礼」みたいなの、ありますね。

浜野:そうそう。一方で自分もつい検索してしまうっていう後ろめたさもあって。共演者のかわいい子のこととかをコソコソ調べたり…(笑)。
業界の人じゃなくても、どっかでなんかしら情報出てるだろうと思って調べて、FacebookとかTwitterを見つけちゃってめちゃ見てしまったりとか(笑)。そういうなんだか後ろめたい気持ちも歌われている曲なんだけど…これだけ妻にすごい褒められた(笑)「自分検索の曲良かったよ」って。

―(笑)。

浜野:検索って地球を巡っている気持ちになるでしょ?世界中のことを調べられるし。とりあえず世界なんてそんなもんでいいでしょっていう思いと、それってどうなの?っていう思いが、交錯しているような。

―仰木さんのギターに不思議なエフェクトがかかっていて、思いが複雑に交錯しているその感じが出ている気がしますね(笑)

橋本:あのエフェクター、レコーディングで初めて持ってきていきなり使ってたよね。

浜野:ホントに仰木は突然いろいろ持ってくるからな~。

仰木:これは「表現」ってバンドの佐藤公哉くんの引っ越しを手伝ったときにもらったエフェクターなんです。「これは絶対在日ファンクに合うな」って思っていたんですけど、これまではハマケンがエフェクティブなことを許してくれない雰囲気なので躊躇していた…(笑)

浜野:今回ようやく解禁(笑)。

橋本:ワウ(ペダル)には抵抗するのに、これはオッケーなんだっていう(笑)。

浜野:だって、ワウって普通にかっこよくなっちゃうじゃん。

2.足元

―7inchシングルとして先行リリースされました。アナログ盤でシングルを先に切るというのもとてもカクバリズム的ですね。

浜野:そう。ずっとやりたかったんですよ。

―この曲はすごく仕上がってる感があります。構成とかも完璧。

浜野:構成はねえ、かなり揉んだんですよ(笑)。

橋本:俺が入る前からあった曲で、アイデアリストに眠っていたらしいんです。ホーンのテーマすらなくて簡単なリフだけの状態で。 今回のアルバムで一番俺が働いたと思うところは、ボツになっている曲をとりあえず全部一回やってみようよって言ったことですね(笑)。

浜野:コンスタントに言ってくるんですよ。「あの曲とかどうなの?」「この曲やらないの?」って。そん時の俺としては「今さらやるのかよ?」ってなるんだけど、いざやってみると「あれ?いいじゃん」っていう(笑)。

仰木:この曲は終わり方がわからなくなって、ぐるぐるしちゃって…。普通に二回サビを繰り返して終わってしまうみたいな感じだったんですけど、それを一捻りして転調してくホーン隊のソロ回しとブレイクをくっつけた。

―その展開、聴いていてゾクゾクしました。

永田:他の曲でも仰木は構成をひっくり返しがちだよね。

浜野:「思い切ってこのパート頭に持っていこいうよ」とかって。

―ファンクって他のジャンルの音楽よりそれができてしまうっていう妙味がありますよね。Aメロ~Bメロみたいな感じというより、基本ループで構成されるから。
ホーン譜は引き続き浜野さんが作っているんですか?

浜野:僕が書いていって、おかしいところをホーン隊のみんなに直してもらうっていう形です。橋本くんのクレジットが入っているものは橋本くんも譜面を書いてくれています。

―以前から感じていましたが、改めてホーンのアレンジにビッグバンド出身である浜野さんの出自が出ているなって思います。こういうソリッドな曲にそれが乗ると在日ファンクならではの感じが際立ってかっこいい。

浜野:嬉しいですね。…でも、ビッグバンドジャズをずっとやっている人たち(基、久保田)を前にしてそういうことを言うのもアレなんですが…。

基:大丈夫です(笑)。ジェントル(久保田)寝ているし(笑)。

久保田:Zzzz…

一同:(笑)

浜野:3管だからビックバンドの大編成の感じが出るわけじゃなんだけど、敢えてそのぶ厚さを目指しているところはありますね。 この曲に関してはシンプルにユニゾンからハーモニーに行くんだけど、だんだんユニゾンの入れ方がわかってきたという(笑)。前まではひたすら違うフレーズ同士をぶつけりゃいいんだと思ってたから(笑)。

―今回は基さんがフルートを導入していますよね。もともと別のバンドなどでは演奏していたんですか?

基:いえ。今年の2月にはじめました。

―え!なんで急にやろうと?

基:単純に、新しいことやりたいなって思っていたんですよ。 あと、基本永田さんがやっていますけど、今回は僕もパーカッションを演奏しています。去年から「むくみ」をパーカッション入りの違うアレンジでやっていたりして、そういうのがもっとあっていいんじゃないかなと思ってたんですよね。

永田:基くんが楽しそうにパーカッションを演奏するから、それによって曲に入る余地が増えた感じですね。ハマケンも「しょうがねえなあ」みたいな感じで(笑)。

浜野:みんなリーダーのこと差し置いていろいろやりだした(笑)。

橋本:シンプルな7つの音だけじゃなくて広がりが出ている感じがするよね。

3.葛藤&ファンク

「葛藤」と「ファンク」を並列に並べるっていう。なんだか「葛藤」っていう音楽ジャンルがあるみたいな。

一同:ははは。

―言い方を変えると、ファンクっていうものは葛藤という概念を孕んでいるのかな、って。

浜野:そうなんですよ。葛藤の中で無限のグルーヴが生まれてくるってのはある。
グルーヴって、みんなに合わせるんだけど、ある部分では別方向に向かうというか、全体に溶け込むようで自分を持っていないと出てこない。
ファンクの場合、コンピューターみたいにスクエアなビートだとつまらなかったりするから、ちょっとモタったり、走ったりとかが重要なんだけど、それを意識し過ぎるとなかなか良いグルーヴにならなかったり、そういう葛藤がある。

永田:ファンクって、打点への執着性が高くないと、ファンクに聞こえないっていう性質がある。ただズレればよいわけじゃなくて、「ここだ!」って気合をもってズレればかっこよくなる。

浜野:気合と余裕っていうそもそも相容れなそうなものが、それこそファンクには葛藤として存在しているっていう。

―生意気な感想なんですけど、今回のアルバム、全編に渡って啓太さんベースが特にカッコいいなあって思っていて。やっぱり永田さんが話したようなリズムへの意識がありますか?

啓太:そうですね。まさに「気合い」っていうのはあると思います。なかなか言葉にするのは難しい感覚ですけどね(笑)。

4.亜種

―先程浜野さんがギターのエフェクターについての下りで「それやったらかっこよくなちゃうじゃん」って言ってましたよね。それっていわゆる「普通にかっこいい」ことを避けるってことなんだと思うのですが、それに反してこの曲は普通にかっこいいなと思いました(笑)。これは仰木さん作曲ですね。

仰木:これは、JxJxさん(YOUR SONG IS GOOD)と話したときに、「在日ファンクのライブを観た後、久々にJB(ジェームス・ブラウン)の映像も観てみたけど、結構違うね」って言われて(笑)。で、「普通にJBマナーの曲があってもいいんじゃない?」って言ってくれて。その意見をそのまま鵜呑みにして作った曲なんですけど(笑)。

―素直に70年代前後のJB'sみたいですよね。浜野さんは昔からJB's的なことはやりたくないって言ってましたよね?

浜野:はいそうですね(笑)。なんかオシャレ感があるっていうか…

―そうすかね?(笑)

浜野:でもこれはJB’sじゃなくてあくまでJBの世界(笑)。

橋本:これは出来上がるの早かったよね。やっぱりストレートなものだから。

仰木:リハでもずっと後回し後回しにされて。ハマケンが作ってきた他の曲をいつも優先して…。

浜野:違うよ!「これやる?」ってみんなに尋ねてたよ!仰木にそうやって言われないように…。

仰木:だって、スタジオ時間の残り15分とかで、「あ、じゃあ、あれ…やる…?」みたいにイヤイヤやる感じで…。
そういう扱いを受けてたから、「これはまあすぐにできるっしょ」みたいな感じでレコーディングまでふわっとしていて。

基:実際すぐにできた(笑)

―音楽オタク的な人へ、「JBスタイル、俺たちもちゃんと出来るんだぞ」ってわからせる曲になっていますよね(笑)。

永田:これ、最初に録ったものがなんかふにゃっとしてて、みんなで一回餃子を食べに行って、帰ってきてからもう一回やったんだよね。

橋本:そう。だけど餃子食って録って、それでもダメで。で、浜野くんがリズム隊のいるブースで踊りながら指揮をするっていうやり方で録った。それでやっと良くなったんじゃなかったっけ?

浜野:そうそう。

永田:それで、他の曲もその録り方いいんじゃないかっていうことになったんだけど、これだけだった(笑)。そううまくはいかない。

久保田:曲からは仰木らしさが随所に出ていますよね。

基:あ、ジェントルが起きた(笑)。

浜野:(笑)ライブでやってても気持ちいい。盛り上がるしね。

啓太:いまセットリストの鉄板になってます。

仰木:亜種って言葉を繰り返す歌詞なんだけど、それをハマケンがどう調理するかに注目していたんです。一回目の亜種はこうだけど二回目の亜種はこうでという感じで、さすが朝ドラ俳優だけあって歌い方がとても多様。

浜野:(笑)。

―「亜種」っていうワードは、色んな意味に受け取れますよね。逆に「主流」ってものはなにを想定しているんですか?それこそJBとかのこと?

仰木:そうすね。「在日ファンク」って名前は、はじめましてのメディアに行ったりすると必ず「どういう意味?」って訊かれるし、昔からファンクを聴いてきたおじさんたちからは「お前らみたいなのはファンクじゃない」って扱われたり。そういうものに対してもう開きなおっちゃおうと。

―しかもそれを「本格的な」ファンクの曲調でやるっていう。

浜野:逆の逆を行く(笑)。

5. 健やかなる時も病める時も

―これはまた実にメロウで。

浜野:後関さんが辞めるライブのときに、最後に新曲をぶつけてやろうと思って作った曲。それっきり演奏しないつもりだったんだけど、なぜかマサヤ(小林マネージャー)がこれに反応して、「あの曲良かったのに入れないんですか?」って言ってきて。じゃあ入れるか、と。

―在日ファンクの音楽性の大きな魅力の一つとして、メロウさってものがあると思います。古くは2012年のEP『連絡』でそれを全面に押し出したりもしたし。
あれって、その後の時代の流れから言うとかなり早かったよなあって。というのも、その後ネオソウル的なものとかメロウなものが流行ったでしょう?

浜野:ああ~。そうかあ、そうですよねえ。

永田:初めて言ってくれたなあ(笑)。誰も気付いてない(笑)。

―もう2~3年遅かったらバッチリ世のトレンドにハマっていたのに…という。結果的にそういうシーンの先駆者になっているかもしれないことについてどう思いますか?

浜野:いや、なってないっしょ(笑)

一同:ははは。

―でも、パブリックイメージの裏で、そういうのをやり続けてきたってことは事実なわけで。

久保田:特に仰木はその要素を元から持っている感じあるよね。

仰木:そうですね。好きですね。ハマケンもあるよね。この曲はハマケン作だし。

―歌詞もメロウというか、浜野さんの家庭人としての愛を感じるような。

浜野:でも、これを録ったときって夫婦関係がうまくいってなかった時期で…。

―また赤裸々な…。

浜野:在日ファンクの作業をやっているときって、創作活動に没頭しちゃうから家庭内に一番に波紋があって…創作と家庭人の両立って僕にとってすごく難しい組み合わせで…。
だから、自分で作っておいて「健やかなる時も病める時も」とか簡単に言ってんじゃねえよ!って気持ちになってたという。

―あ、そうか、これって結婚式で牧師さんがいうやつですね。「どんなときでもお互い支え合うことを誓いますか?」っていう。

浜野:そう。割と曲本来の雰囲気からすると激しい感じのテイクが採用されているんですよ。「こんな状態で支え合えるわけねえよ、できるわけねえよ…」って気持ちとか、「それでもやんなきゃな!」って気持ちが相混じった感じ。

―たしかに、いろいろあるけど支え合って行こうね、という表明にも感じられます。

浜野:支え合っていこうねっていう優しい曲のつもりで作っていたけど、演奏は「苦しい!」っていう感覚が出ていいて、それがリアルでいいなと思っていて。メロウな曲の雰囲気で素直に録って、優しいだけの曲になっていたらもっとアルバムの後ろの方に入っていたと思いますね。

6.飽和

―ゲストボーカルに、思い出野郎Aチームからマコイチさんを迎えていますね。彼らって在日ファンクに古くからゆかりがあって、「京都」のPVに出てくる大仏を作ってくれたチームがメンバーだったりするんですよね?

浜野:そうそう。

永田:たしかその時彼らのデモCD-Rもらったよね。

啓太:多摩美の学祭に俺らが出たときに、彼らが教室でやっているライブを見に言った気がする。

―今回は浜野さんが声をかけた?

浜野:そうです。この曲は、最初にアイデアを考えた時、ミラーボール的なイメージを浮かべたんです。その頃Suchmosとか聞いてたし。

―あ、そういうイメージだったんですか(笑)。

浜野:俺らもこういう曲作りてえなあ、みたいな感じで。けど、実際在日ファンクでやってみたらどんどん違う方向に…(笑)。

―かなり野趣溢れる感じになってますよね。

仰木:魔界村みたいな。

浜野:最初はディスコ感をなくさないようにアレンジも考えていたんだけど、在日ファンクはスピード感があってなんぼみたいな意識にみんなとらわれているから、どんどん音の密度が多い方へと行ってしまった。

―ディスコ感?僕はあんまり感じなかったですかね(笑)。

浜野:あれ(笑)?

―無菌状態でスムースな感じじゃないからこそ在日ファンクらしくて好きでした。

浜野:そう、菌が充満していて(笑)。ディスコ感っていうか…夜のナイトクラブ感というか。

―あ~。それはありますね。

浜野:だからマコイチくんを誘った。そしたら、やっぱり曲って人の声で全然変わるんだなって思って。

―歌の支配力ってすごいですよね。

浜野:在日ファンクの人たちって、週末どっかのクラブに遊びに行くとか全然やってないし(笑)。彼はそういうパーティーにいる人だし、説得力がある。

―浜野さんとマコイチさんの掛け合いがJBとボビー・バードを思い起こさせます。

浜野:ああ、そうですね。輩同士な感じ(笑)。

―同じレーベルの後輩をクルーとして迎えるっていう。ブラックミュージック的コミュニティ感があってかっこいい。

基:カクバリズム在籍歴的には彼らのほうが先輩ですけどね(笑)

浜野:最初はどうレコーディングに迎えていいのやら緊張しましたけどね(笑)。あっちも平身低頭で「おはよいうございます…!」みたいな感じできたから。僕ら「おう、お前、やっちゃえよ」みたいなキャラじゃないし(笑)。

―「飽和」というワードの選択も面白い。「飽和」って悪い意味で捉えられがちだけど、すべてが満ちているってことだし、むしろいいじゃんみたいな発想の転換があるのかなって。

浜野:包まれているみたいな感覚ですよね。男女デュオの掛け合いのように、マコイチくんと俺のおじさん同士やったら面白いかなって思って、結果見事に飽和したっていう(笑)。

7.或いは

―これもまたとてもメロウですね。

仰木:最初はボツ曲墓場で埋もれていた曲なんです。
Aメロだけあって、展開の先はできてなかった。でもその部分がすごくよくて。ハマケンのボーカルも今までにない歌い方で成立している感じがあったので。これを捨てちゃうのはもったいないんじゃないかと。

―新しい要素として、ヒップホップやネオソウル的なリズム感を感じました。

浜野:そう。まさにそれ。

永田:「こんな音にしよう」っていうのはキッズくんも含めて話し合っていたよね。
それこそトライブ・コールド・クエストとかを参考にしたり…。

橋本:ノリがメロウに流れすぎないように、とかも話しましたね。

―たしかにメロディの譜割りが甘い方向に流れすぎていない感じがありますね。それこそ内外の音楽の最新モードに通じる感覚が入っている気がして。

浜野:(大声で)やった!

―危惧していたカクバリズム感のハードルもこの曲で見事クリアして…。

浜野:ははは。この曲、ライブでやると、その時の状況で毎回全然違った様相になるんですよね。最初はちょっとしんみりする曲としてセトリに配置していたんだけど、すごい盛り上がったライブのとき流れで演奏したら重心の低い腰がズンっと入った感じで演奏できたんですよ。

―そういうのってこれまでの在日ファンクのライブでは珍しい気が。

浜野:途中で熱量が上がってあったまってくる瞬間、お客さんも一緒に横ノリでじわじわ盛り上がってく感じがあった。

―歌詞も示唆深い。いろいろ選択肢は他にもあるんだよというと、余計な付け足しみたいに思われがちだけど、そもそもいっぱいあるって自由でいいじゃんっていう。迷うこと自体を肯定されている感じがして、聴いていてポジティブな気持ちになる。

浜野:窮屈な今の時代にあっても、自由を謳歌することができている、とても崇高な曲かもしれない。みんなどうですか?

一同:…。

浜野:なんで黙るんだよ(笑)。

啓太:この「或いは」や「亜種」も、スタンスとしてオルタナティブな感じだし、曲としても余白と伸びしろがあって、ライブでもやりやすい。俺の中では歌詞の世界もその2曲は近い気がする。

―肩肘張って「俺たちがオルタナティブだ!」みたいな感じがなくて、余裕がありますよね。「変わりものでーす!注目して下さーい!」みたいな感じが一切ない。

仰木:今までの曲に比べるとより生の感覚に近いのかもしれない。今までは設定や役を演じるような曲もあったけど、そういう曲って結局今ライブでやらなくなっていたりする。「或いは」は、いつでも自然で、どういうセトリに入ってきてもしっくりくる曲だなと思います。

8.なみ

―仰木さんとJxJxさん(YOUR SONG IS GOOD)と共作。これこそシティポップじゃないですか。

浜野:これをシティポップっていうんですね。

―シティポップかシティポップじゃないかで言ったら、これはもうシティポップじゃないですか。

一同:ははは。

仰木:これはまず、JxJxさんと色んな曲のコードがどうなっているかを研究する作業があって。これまで、いわゆる王道のコード進行を避けてきたっていう経緯があるんですけど、それを解禁したいんですという相談をしたんです。そしたら、とにかくいろんなコードを試して、ひたすら循環して在日ファンクにハマる進行を見つけようという話になって。で、まさかのキリンジ「エイリアンズ」のコードとか急にJxJxさんが持って来たり…。

―めちゃ王道(笑)。

仰木:改めてコードを紐解くと「ここの進行やばくない?」とか二人で弾き語って盛り上がってました(笑)。「坂本慎太郎さん、やっぱいいなあ」みたいな。

―少年のよう。

仰木:あとはジャスティン・ティンバーレイクの曲を聞いたりしながら歌詞を分析して研究したり、その他にもハワイのレアグルーブとか参考になりそうな曲をとにかく一緒に沢山聴いてヴァイブス調整をしました。
で、最初はドライビング・ソングにしようって話だったんですけど、スピードを上げていくんじゃなくて、ゆっくりにしようというのがテーマで。最終的にはハマケンがいとなみってワードを持って来てくれたことで、ゆっくりグルーヴしようってテーマが、波が打ち寄せてる感じと上手くつながったと思います。

―ブリーズが心の中を駆け抜けますね。JxJxさんの弾くローズの響きと、仰木さんのギターのサウンドの融合もたまらなくアーベイン。

仰木:初めてストラトのハーフトーンを使ってレコーディングしてみたんですよ。
そういうシティポップ的王道を避けてきたんだけど、今回は避けずに(笑)。

浜野:これは特にテンポこだわったよね。最初はアリス・クラークの速い曲みたいなイメージだったのを、グッと落として。

基:キーも落としました。

浜野:在日ファンク的には画期的な落とし方なんですよ。

永田:テンポだけじゃなく全体の音量感もそう。ハマケンの歌も張らないっていう。

―それがアダルティーな雰囲気を醸し出している…。

浜野:まあそういうのを目指したわけじゃなかったんだけど、結果アダルティーな雰囲気になったっていう。「夜のジャズファンク」みたいな感じになったらいいなって。

啓太:なんかハマケン「おじさんぽくやろう」っていってなかったっけ?

仰木:おじさんのエッチな感じって言ってたね。

―急にイヤな感じが…。

一同:(笑)。

浜野:この曲ができたことによって次の作品にも何かつながっていくかもしれない。生き急いでて、抑制ということができない人たちだったけど、今回は抑えられた。

―たしかに変なせっかち感はこのアルバム全編から全然感じないですね。

浜野:ライブでも、「これ遅くないか?」ってテンポでやっても大丈夫になってきた。
Suchmosとか、若いのに堂々とゆっくりしたテンポでできてすごいなあって。あ、すんません。

永田:なぜ謝る(笑)

9.ふるさと

―インストというか、スキットというか…これも全然タイトじゃなくむしろユルい。

基:これは何も決まってない状態で始まりましたね(笑)

久保田:完全にセッション。

橋本:仰木くんがアイデアとしてこっそり候補曲に入れてた。

―Pファンクの人たちがダラダラセッションしているみたいな感じを受けたんですが、それってこれまでの在日ファンクにはなかったですよね。ルーズなグルーヴもそうだし、ギターもかなりエフェクトがかかっていたり、ボコーダーが使われていたり。あと、後半の寸劇が(笑)。

基:このときハマケンが風邪ひいててまともに声がでなくて…

―あ~、だからおじいちゃんが出てくるんですね。

浜野:そうそう。すぐ咳が出ちゃうおじいちゃん。

橋本:これ多分トータルで30分くいらいやったよね。やりながら大爆笑なんです。浜野さんが面白すぎて。

浜野:おじいちゃんがうまくできたんですよね。アドリブで。そのあと面白いからもう一回やってみようってやりなおしたんですけど、全然ダメで(笑)。

久保田:生まれたばかりのおじいちゃんが良かった(笑)

―みんながわいわいしてるセッションが入っているっていうのはアルバムとしてのバラエティが出ますよね。

浜野:たぶんJBもそういう感じで作っていたんだと思いますね。こういう感じでセッションしてみて、それを聴いて、この部分切り取って正式な曲にしよう、みたいな感じで。
もしかして他の曲もこれからはこういう感じで作っていったほうがいいのかな、とかも思いましたね。例えば、仰木がもってきたものをフレッシュな状態で演奏しているものに僕がアドリブでフレーズを入れていくっていう形。思えば「ダンボール肉まん」もそんな感じで作ったんですよね。

―その方がワードやフレーズとして結果的に生命力がある、みたいな?

浜野:そうそう。だからこれはある意味で一番僕達らしい曲かもしれません。

10.ハートレス

―これも抑えた感じで、いぶし銀のファンクネスを感じました。

永田:これは2テイクあって、スルとっいったものといってないもの。アルバムにはいってないほうが収録されているんです。

―あえてそうしたんですか?

永田:このテイクの方が熱量みたいなのものがあったんです。これまで、どうしても曲ができた時のフレッシュな感覚を忘れてやっているうちに既存の曲と同じようになってしまうことがよくあって。今回は、今までなかったバンドの要素があるはずだという議論を経て作った。この「ハートレス」も結果的に今までになかった感じのノリの曲になったと思う。

橋本:これはアルバムの中で一番最初にできた曲だね。

浜野:この曲のデモができて、角張さんをその気にさせようと思って聴かせたら「あれは、アルバムの中の曲としてはいいかもね」って言われてガクッと来て…(笑)。すこし寝かせといたんだけど、みんなも「ライブであれやろうよ」って言ってくれたり。
実際、ライブによく来てくれるお客さんに「すごい良かった!」って言ってもらえて。

久保田:そう。この曲は評判いいんだよね。

―「ハートレス=冷酷」っていうのは、冷酷である自分のことなのか、それとも誰か他の人のことなのでしょうか…?

浜野:結局自分のことですね。「ハートレス」って言葉をハートフルな熱量をもって歌う、みたいな曲(笑)。テキトーに「愛している」的なことを歌うよりも、どうしよう!愛がないのかもしれない!ってことを心を込めて歌ったほうがむしろ…。

―真摯な感じが。

浜野:そう。「愛が無いかもしれないんです!嘘はつけないし!」ってエモーショナルに言った方が本当の気持ちは伝わるのかなと思って。実際に以前ある人に「浜野さんってハートレスですよね」って言われたことがあって作った曲です(笑)。

―すごい失礼な(笑)。

11.再会

―アルバムタイトルソング。曲を聴く前は、単純に色々な人達と「再び会う」っていう意味なんだと思っていたら、実際に聴いて歌詞を読むと別れの色調が強い内容ですよね。

浜野:次の「泊まっていきなよ」もそうなんですけど、息子を見ていてできた曲かもしれないです。家族で人の家にお邪魔したときとか、やっぱり「泊まっていきたい~」とか駄々をこねるし、「別れるの嫌だ~」とかも言う。そういう子供の姿を見るとたしなめたくなるけど、その気持のことをちゃんと考えてみると、俺だってそうだなって思う。大人だからそんなこと言っちゃいけないんだって自分に言い聞かせているだけで。
子供には「そんなに悲しんでばっかりいると、他に沢山ある楽しいことが分からなくなってしまうよ」ってよく言い聞かせているんですけど、そういうことも大人の世界に通じるなと思っていて。

―現実的に浜野さんが経てきたいろんな別れとも関係してる…?

浜野:そこまで意識してはいなかったけど、確かに関係あるかもしれないですね。これまでSAKEROCKが解散したことでも色々な別れがあったし、逆に今回在日ファンクがカクバリズムに移ってきたことで本当の意味でこれまでにさよならできそうな気がした。SAKEROCKではあんなにバカなことやってふわふわした感じだったのに、今は踊りまくって「ヘイ!」とかシャウトしてステップ踏んで飛び跳ねたりとか……。何やってんだよって自分の出自が自分にツッコミを入れてくるようなところがあったんだけど、それがようやくなくなったというか。

―なるほど。再会したからこそ、それでお別れできたこともある、と…。

浜野:そう。きっと別れを経ることで違う景色が広がるんだって思うんだけど、やっぱり最初はどうしたって寂しい。それでも奮い立たせていくしかないなって。
そうやって感傷的になりながら曲を書いていたら、仰木に「この曲は抽象的すぎる具体的なフレーズを入れていったほうがいい」って言われて。「歌詞に狸と狐を入れない?」って言われて。

―むしろ抽象的になっているんじゃないかっていう(笑)。

浜野:(笑)。

―狸と狐、これはなんの比喩なんでしょう…?

仰木:この曲を最初に聞かせてもらったとき、何となく児童館の帰り道で聞くような「にんげんっていいな」って歌を思い出して。「熊の子見ていたかくれんぼ♪」っていう、明るいけどどこか寂しさを感じる曲…。
大人も、なにか楽しいことがあったあとの帰り道って、ギュウギュウの満員電車乗って大変な思いをして帰らなきゃいけなかったり、結構ハードだよなあ、って。酔っ払っている人やうたた寝している人がいたり、色んな人の人生が垣間見えたりする時間。そういういろいろな人たちが再会って曲には含まれてる気がして、あの歌に出てくる動物と人間って視点とか、平成たぬき合戦ぽんぽこみたいな世界観が浮かんできたんですよね。

浜野:でも大人はズルいですよね。ずっと一緒にいたかったら「まだ飲もうよ!」みたいなことも言えるし。それで朝まで飲んでヘロヘロになって「ばいばい~」みたいな。子供には「もう家に帰るよ!」とかすぐ言うのに(笑)。

12.泊まっていきなよ

この曲も位「再会」に通じるさびしんぼうな感じがありますね。

浜野:子供からなぜインスピレーション受けるかっていえば、やっぱり彼らの思いがすごく激しいから。一度そう思ったら泣き叫んで訴える(笑)。
それも僕なりに突き詰めると、大人は大人として分別を付けている気になっているけど、突き詰めれば、僕らの心の動きも全部子供みたいな大きな愛だったり強い感情と変わらないんだろうなと思っていて。

―「大人だってざびしいんだー!」という主張を感じます。
ファルセットのコーラスやパーカッションも入っていて、温かみのあるアンサンブルになっていますよね。アルバム最後で優しく包んでくれている感じがあって、しっとりした気持ちで聴き終えました。アルバム全編に渡って、大人の遊び心や余裕が溶かし込まれている感じがしました。

浜野:それは嬉しいですね。ようやくみんなに余裕が出てきたってことなのかな(笑)。

【アルバムを作り終えて~ツアーに向けて】

―怒涛の期間を経てアルバムを作り終えて、「再会」というキーワードに象徴されるように、改めて今バンドがとてもいい状態になってきているんだなと感じました。
 聞き手の皆さんにも、バンドと同じように日々色んなことに揉まれている人も多いと思うのですが…色んなことに揉まれることのベテランともいえる在日ファンクから、そんなリスナー達へ何か一言お願いします。

浜野:もう赦してくれるだけでいい。聴いてくれ!ヘビロテしてくれ!とか言わないので、この窮屈な世の中で在日ファンクというおじさん集団が勝手気ままにグルーヴし続けていることを赦してくれればそれでいい。その時点であなたも共犯者。そして新しい在日ファンクと必ずや再会するはずです。YOROSHIKU!

―リリースツアーも控えていますが、このアルバムの曲たちをどんな風にライブの場で届けていきたいですか?

浜野:今回収録した曲たちは、きっとエンドレスに演奏し続けていられそうだなと思える曲にしよう!ってなったんです。ずっとやり続けられるってことはつまりどんどん変わり続けることができるということ。ツアーに来てくれたみんなとともにどういう変貌を遂げていくのか、この先のワクワクが止まりません。是非とも在日ファンクのグルーヴに影響しに来てください。

―楽しみにしています!長時間ありがとうございました。

(インタビュアー:柴崎 祐二)